夏とは言え、アングルでも北方に位置するマーブルは朝晩が肌寒く、暖炉にはまだ薪がくべられていた。そして、それは単に気候だけが理由ではなかった。
天蓋からカーテンが降りた寝台にアリス・タイバーンが横たわっている。その寝台の淵に、不安そうな表情でエレソナが佇んでいる。
「母上、ご気分は……」
「……体が……、重いわ」
か細い声にエレソナは目を眇めた。去年ローランド会戦が行われた際、母の体がやけに細くなったことに気づいたエレソナだったが、戦いが終わると同時にアリスは床に伏したのだ。
「色々あったから……、きっとお疲れになったんだ」
だが、エレソナもアリス本人も、それがただの疲労ではないことに気づいていた。
「戦局はどうなっているの?」
「母上が心配することはない」
「でも、イングレスを奪われたままでは……」
「王都などいつでも奪い返してみせる。母上はゆっくりお体を休めて」
アリスは、頬を撫でる娘の手の温もりに目を細めた。面痩せした母をじっと見つめるエレソナの背に声がかけられる。
「……エレソナ様」
振り返ると、シェルトンがいつの間に影のようにひっそりと佇んでいる。
「どうした」
彼はアリスにちらりと視線を送るが、本人が目で促す。
「クレドから……、使者が参りました」
エレソナの顔が引きつる。アリスも不安げに眉をひそめる。
「どこにいる」
「すでに帰しました」
エレソナは露骨に舌打ちをした。
「何故私に知らせない」
「交渉事は私にお任せ下さい。今後のこともあります」
「で、何と言ってきた」
シェルトンはしばし口をつぐむと、ゆっくりと語り始めた。
「あまりにも唐突なことなので、俄かには信じがたいのですが。イングレスを奪還するために同盟を結びたいと」
エレソナはやぶ睨みの目をさらに眇めた。
「……同盟だと」
「あちらが言うには、ルール公にもこの話を持ちかけているそうです」
「どういうつもりだ」
「レディ・キリエ側としては、いつまでも王都を異国の王に奪われた状態にしておきたくない。ここは庶子三人が手を結び、早急に王都を奪還するべきだと」
「勝手にしろ。私は知らん」
「エレソナ様」
エレソナの投げやりな態度にシェルトンは眉をひそめる。
「同盟はこちらにとっても利があります。庶子の勢力の中では我々が最も軍事力に欠けております。同盟を結び、行動を共にすることで相手の手の内もわかります。それと……」
「何だ」
シェルトンの小出しにする言い方にいらいらしながらエレソナが先を促す。
「この同盟に、ガリアのギョーム王太子も協力するそうです」
「……ガリアのギョーム?」
予想外の名前にエレソナは顔をしかめた。
「父王を討つためにアングルの庶子たちの協力を得たいそうです」
「親不孝者めが」
「ですが、王太子ならばリシャール王の戦略もわかるでしょうし、何よりも大きな戦力になることは間違いありません」
エレソナは落ち着かない様子で腕組みをするとその場をあてどなく歩き回る。
「……兄上にも持ちかけていると?」
「ルール公は自尊心が高いお方故、すぐに承服なさるとは思えませぬが、リシャール王をどうにかしたいと一番お考えなのは、あのお方でしょう」
「何か裏があるのではないか?」
エレソナが疑い深そうな目つきでシェルトンを振り返る。
「……確かに、何か魂胆がありそうな話ではあります」
シェルトンの言う通り、軍事力が圧倒的に不利なまま戦いを続けていくのは無謀だ。病に侵された母のためにも、これ以上苦しい状況にさせるわけにはいかない。エレソナはしばらく黙り込むとゆっくり顔を上げた。
「……まずは兄上の出方を見よう」
「わかりました」
シェルトンが頷くと、アリスが夜具の端から細い手を伸ばす。黙ってその手をそっと握ると、アリスは安心したように表情をゆるめる。その様子を目にしたエレソナは、黙って寝室を出ていった。
「……具合はどうだ」
愛人の言葉に、アリスはすぐには口を開かなかった。握りしめた手に指を絡めると目を閉じる。
「アリス」
「お願い、ジェラルド」
小さな囁きに身を屈めて耳を近づける。
「もう、王位はいいわ」
あれほど王位にこだわっていたアリスの言葉に、シェルトンは眉をひそめた。
「王位はもう、どうでもいいわ。でも、私たちに対する仕打ちは許せない。……復讐してやりたい」
シェルトンはアリスの前髪を掻き揚げると額に唇を押し付けた。
「……でも、今の私に大事なのは、復讐よりも、エレソナよ」
「ああ」
アリスはシェルトンの頬に手を沿え、じっと瞳を見つめた。
「……ごめんなさい。王位も復讐もいい。あの子を……、あの子を守って。お願い……」
何を今更、と言いたげに顔を歪めたシェルトンに、アリスは辛そうに目を閉じる。
「……あなたには、謝っても謝りきれない。あなたは、私たちのせいで、たくさんの大事なものを失ったのに」
それ以上は言わさず、シェルトンは覆いかぶさるようにして抱きしめた。しばし黙ったまま抱き合っていた二人だが、やがてアリスはぽつりと呟いた。
「……でもね、私。それでも幸せなのよ。あなたと、エレソナと、三人でいられることに……」
広大なルール公領の中心に聳え立つルール城。大広間に続く石造りの廊下に騒がしい靴音が響き渡る。扉が開かれ、待っていた二人の男が振り返った。ジョンとレスターは、鋭い視線で城の主を見つめた。
「クレドからの使者だと? ふん、生意気な」
レノックスはわずかにひきつった表情で呟くと上座へと向かった。
「……ジョン・トゥリー子爵です」
「フランシス・レスター男爵です」
「妹は達者か」
レノックスは椅子に腰を下ろすと居丈高に尋ねた。ジョンが顔を歪め、少し遅れて「はい」と返事を返す。教会から連れ出されたばかりの異母妹を犯そうとした男の言葉とも思えない。
「グローリア女伯からのお言葉を伝えに参りました」
「その前に」
レノックスが身を乗り出してジョンの言葉を遮る。
「おまえたちに聞きたいことがある。……ロバート・モーティマー。クレドにはおらぬか」
ジョンとレスターはわずかに顔を見合わせると、顔を横に振る。
「……いえ。去年プレセア宮殿で会って以来、見かけませぬ」
「そうか」
レノックスは目を眇めると苦々しげに呟いた。
「去年、ローランド戦の直前から姿を消した。てっきり……、クレドへ寝返ったかと思ったが。クレドにもおらぬということは、ベル・フォン・ユヴェーレンとリシャール王を結びつけたのは奴か」
レスターは顔をしかめると肩をすくめた。ジョンも険しい表情を崩さない。レノックスはふんと鼻を鳴らした。
「まぁ、どうでもいいことだ。それより、おまえたちの話を聞こうか」
ジョンは改めて正面から相手を見据えた。冷血公とこんな形で相見えるのは初めてだ。
「イングレスがリシャール王に奪われてから早七ヶ月が経とうとしております。イングレス市内でも衝突が頻発していることもあり、リシャール王は未だ侵略の手をアングル全土に向けてはいませんが、いずれは征服のために軍を進めるでしょう」
レノックスは考え込む顔つきでジョンを凝視するが、特に反論はしない。
「異国からの侵略だけは避けねばなりません。我が君、グローリア女伯はそのためにルール公やタイバーン女子爵と同盟を結びたいとの考えをお持ちです」
「……ほう」
そこまで聞いてレノックスはにやりと笑みを浮かべた。
「それは……、キリエの考えではないな」
ジョンがあからさまに顔をしかめ、レスターが顔を上げる。
「女伯のご決断でございます」
「あれが私と手を組みたいなどと考えるものか」
鼻で笑いながら言い放つレノックスに、ジョンは不機嫌そうに言い返す。
「……よくわかっておられる」
「子爵」
ヒューイットが気色ばむがレノックスが手を挙げて制する。
「顔を見るのも忌まわしい兄上と手を組むしかないと、苦渋の決断したわけだ」
「女伯は、誰よりもこの国と民のことを考えておられます」
レスターの慇懃な言葉にレノックスは忍び笑いを漏らす。
「正直に申せ。ガリアの若獅子に唆されたのだろう?」
ジョンの眉間に深い皴が刻まれる。すでにエスタドと連絡を取り合っているのか。
「見目麗しい王太子の口車に乗せられるとは、案外あれも俗物だったな。言っておくがあの小僧、見た目通りの人間ではないぞ」
「イングレスからリシャール王を駆逐したいとの意見が一致したに過ぎませぬ」
「なるほど。ギョームとバートランドが話をつけたのだな」
「ルール公」
ジョンがわずかに怒気を含んだ声で言い返す。
「女伯はこの一年で大きく成長されました。それは、あなたもご覧になられたはず」
レノックスの脳裏に、似合わぬ鎧を着込み、震える手で剣を抜き放った妹の姿が蘇る。あの戦いは、確かに自分が破れたのだ。くすぶっていた怒りに火がつきそうになるが、レノックスはかろうじて押し殺した。
「……リシャールは確かに邪魔だ」
レノックスは静かに呟いた。
「早々にお引き取り願わねばな。で、同盟の内容は」
「それは、三者にギョーム王太子を加えた会談で決めたいと」
「……どこで」
「王太子はクレドを望んでおります」
「奴にそこまで義理立てすることもあるまいッ」
思わず声を荒らげるが、レスターが冷静に申し立てる。
「クレドはイングレスにもホワイトピークにも近うございます。リシャール王が占領しているのはイングレスだけではございません。地の利を考えても、すぐに行動を起こせるのはクレドではないかと」
ヒューイットは苦い表情でクレドからの使者を見やった。確かにホワイトピークが落とされたままだと、いつ他の国が攻めてくるかわからない。王都を襲撃するならば、ホワイトピークも同時に奪還せねばならない。レノックスはそれを素直に認めたくないらしい。ヒューイットが声をかけようとした時。
「失礼いたしますッ」
従者が一人、慌てた様子で大広間に飛び込んでくる。従者がレノックスの耳に何事か囁くと、彼の表情がさっと変わる。ジョンとレスターがわずかに顔を見合わせる。やがてレノックスは目を伏せると従者を下がらせた。
「……ジョン・トゥリー」
「はい」
レノックスは溜め込んだ息を吐き出した。
「リシャールがプレセア宮殿から軍を出した」
「は?」
一瞬意味がわからずに問い返すジョンに、レノックスは勢いよく立ち上がった。
「まず手始めに隣接するブリー公領。……アングル全域に手を出すつもりだ」
ジョンは、思わず息を呑んで冷血公を見上げた。
「気は進まぬが……、手を組んだ方がよさそうだな」
リシャールがついにアングル全土を支配するべく軍勢を繰り出した。その報せは速やかに庶子たちにもたらされ、誰もがどこか非現実的に捉えていた同盟話は一気に現実味を帯びた。そして、斥候がアングル全域に送り込まれ、使者が行き交い、ついに同盟のための会談の場が設けられた。リシャール進軍のわずか翌日のことである。
クレド城では、会談の準備と共に軍備を整えていたため、異様な緊迫感に溢れていた。〈冷血公〉と〈タイバーンの雌狼〉、〈ロンディニウム教会の修道女〉、そして〈ガリアの若獅子〉が、ここクレドに集結する。キリエは抑えきれない不安と胸騒ぎで、朝から固い表情をしていた。薄い黄色の衣装は、キリエが身にまとうと金色に輝いて見えた。だが、それ故沈みがちの顔色が目立つ。
「昼には皆揃うだろう」
ジュビリーの言葉も耳に入らず、「えっ?」と聞き返す。
「……落ち着け」
「お、落ち着いているわ」
見え透いた嘘にジュビリーは小さく溜め息をつく。
「会談は、恐らく私とギョームで進めることになる」
「レノックスが黙っているかしら」
「戦略的なことは何もわかっていない男だ。奴にはせいぜい前線で戦ってもらう」
きっと、本人も喜んで戦場へ向かうだろう。だが、ジュビリーの言葉にキリエは戦慄した。思わず手を合わせると祈りの言葉を口の中で呟く。また戦争が始まる。また、多くの人が傷つき、死に至る。無心に祈るキリエを、ジュビリーは黙って見守った。
昼近くにキリエが大広間を訪れると、間もなく西塔に篭っていたギョームもバラたちを連れて現れた。彼らはクレド城に逗留しながらも、食事と礼拝以外では西塔を出ることがなかった。
緊張感を漲らせたキリエに、ギョームは相変わらず穏やかに微笑みかけた。
「ご兄姉は?」
「間もなく到着するかと……」
強張った顔つきのキリエに、ギョームはそっと寄り添うと囁いた。
「大丈夫ですよ。あなたは一度冷血公を破った。自信を持って下さい」
だから怖いのだ。とは、ギョームに言い返せなかった。レノックスと戦い、退けた自分も恐ろしかったし、自分に破れたことで怒り狂ったであろう兄と再び会うことも恐ろしかった。そんなキリエの心を知ってか知らずか、ギョームは安心させるように微笑を絶やさない。この笑顔は本物だろうか? 教会を出て以降、ずいぶん疑い深くなったキリエは異国の王太子をじっと見つめた。その様子を見守っていたジュビリーに、ジョンがそっと耳打ちした。
「ルール公とタイバーン女子爵がそろそろ到着します」
「わかった」
「……それと」
ジョンが声を落とし、ジュビリーが振り向く。
「どうした」
「……お耳に入れておきたいことが」
ジョンは深刻そうな顔つきで義兄の耳元で詳細を語った。途中でジュビリーは顔をしかめて呟く。
「エレソナを……、庇った?」
ジョンが頷く。
「私がパイクで突こうとした瞬間、キリエ様が……。ご自分でも戸惑っておいででした」
ローランド会戦での出来事だ。ジュビリーは眉間に皺を寄せ、短く呟く。
「やはり、姉妹か……」
ジョンは思い詰めた表情で頷く。ジュビリーは、キリエのために家系図を書いてやったことを思い出した。あの時彼女はひどく喜んだ。
「私、もう独りじゃないわ。血の繋がる人たちが、こんなにいるなんて」
嬉しそうに語っていたキリエの笑顔が思い出される。物心がつく以前から、家族の存在を知らずに育ったキリエは、こんなにも血の繋がりに飢えていた。それが、自分を殺そうとした腹違いの兄姉でも。
ギョームを上目遣いに見つめながら、彼が語る言葉に頷いているキリエを見守るジュビリーの表情は複雑だった。ギョームはキリエの従兄弟だ。血縁関係がある彼を信頼したいという気持ちと、警戒する気持ちがせめぎ合っていることだろう。ジュビリーが二人に歩み寄ろうとした時。大広間に従者が現れると声高に告げた。
「ルール公がご到着されました」
思わず息を呑んで顔を上げるキリエに目をやると、ジュビリーは「参りましょう」と呟いた。
アプローチに向かうと、異様なざわめきが広がっている。この道の先にレノックスがいる。そう思うとキリエは逃げ出したい気持ちで一杯になる。その思いを必死で抑えながら歩みを運ぶ。衛兵や家臣たちがゆっくりと左右に道を開け、息を呑んで一行を見守る。やがて、キリエはアプローチの先にいる男を見つけると、その場に立ち竦んだ。冷血公はキリエに気づくと静かに笑みを浮かべた。そして、隣のギョームに目をやるとふんと鼻を鳴らす。
「キリエ」
レノックスは妹の名を呼びかけるとゆっくり歩み寄った。キリエの様子が気になったギョームが振り返ると、彼女の後見人、黒衣の伯爵が音もなくキリエの隣にぴたりと寄り添う。そしてギョームは、キリエがジュビリーの胴衣の裾をぎゅっと握りしめたのを見逃さなかった。
「これはこれは」
レノックスはよく通る声で呼びかけた。彼は濃紺の正装で、キリエもギョームも、戦場以外で会うのは初めてだった。
「ギョーム王太子。こんな形で再会しようとは」
「まったくだ」
うっすらと笑みを浮かべながら答えるギョーム。次いでレノックスは直立不動でいる妹に目を移した。
「元気にしていたか、キリエ」
キリエはごくりと唾を飲み込むと兄を見上げた。何を白々しいことを、といった表情にも、どこか怯えの色が見え隠れする。レノックスがにっと笑うと、鼻に刻まれた傷痕が引きつる。あの日と、あの日の後に起こったことが脳裏に蘇り、キリエの呼吸と鼓動が段々と早まっていく。レノックスが黙ったままのキリエに歩み寄ってその手を取ろうとした瞬間。
「触らないでッ!」
キリエが金切り声を上げ、その場に緊張が走る。衛兵たちがとっさに剣の柄に手をかけ、ギョームも思わず身構えるが、ジュビリーがキリエの腕を掴んで後ろに押しやり、衛兵を制した。
ジュビリーとレノックスが無言で見つめ合う。皆が固唾を呑んで見守る中、レノックスはにやりと冷笑を浮かべた。
「……相変わらずだな、バートランド」
ジュビリーは目を眇めるものの何も言わない。
「どうしておまえが守ろうとする女はいつも……」
「レノックス!」
キリエが先を遮るように叫ぶ。瞬間、拳を握りしめたジュビリーはすんでのところで自分を押し留めた。
「……立場をわきまえて。一年前とは違うのよ」
かすれながらも呟くキリエに、レノックスが笑いかける。
「……一年前とは、な」
兄妹の尋常ではないやり取りにギョームはひそかに眉をひそめた。この二人の間に、一体何があったのか……。その時、異常な空気が張りつめた中で、突然若い女の声が響いた。
「ずいぶんと生意気に育ったものね」
皆が一斉に振り返ると、そこには深い緑の衣装を身につけたプラチナブロンドの少女が佇んでいた。その背後には、影のように男が一人控えている。目を見開いたレノックスがゆっくりと口を開く。
「……エレソナ?」
エレソナはにっと笑ってみせると、ゆっくり歩み寄った。
「お久しぶり、兄上。変わってないわね」
「……おまえもな」
次いでエレソナは首を巡らすと妹を見やった。キリエは蛇に睨まれた蛙の如く、顔を引きつらせてその場に立ち尽くした。エレソナのやぶ睨みの目は、突き刺すようにキリエを射た。
エレソナの脳裏に、父エドガーの腕に抱かれていた幼い異母妹の姿がよぎる。一方、キリエはローランド会戦での姉との邂逅を思い出していた。馬を駆り、槍斧を振り上げて突進してきた姉。その姉を庇おうとした自分。何故、あんな事を……。
ただならぬ表情で黙って見つめ合う妹たちを前に、レノックスは苦笑いを浮かべた。
「そういがみ合うな。姉妹同士、仲良くしたらどうだ?」
「……無理ね」
エレソナはキリエから目を離さないまま低く呟いた。
十三年ぶりの再会。それぞれの憎しみを抱え、無言で見つめ合う三人の従兄妹たちを、ギョームは静かに見守っていた。