後書きという名のうんちく
 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 今回はイングランドにおけるカトリック弾圧のお話でした。

 イングランドにおけるカトリック弾圧はそれはひどいものだったそうです。ですが、それも時代と君主の移り変わりによって変化し、それによって人生と運命を変えられたのは平民だけではなく、王族にまで及びます。

 「神の銃口」では、ヘンリー8世、メアリー1世、エリザベス1世でのエピソードをごくかいつまんで描写していますが、この問題は作中にあるようにジェームズ1世治世下でももちろん大きな問題であり、結局はその問題はチャールズが即位した後でも火種として残されます。そして、バビントンが予言した通り、彼は悲劇的な最期を遂げてしまうのです……。

 さて、それはともかくとして……。

 前回の「ホワイトホール宮殿の黒い悪魔」では悪魔が襲いかかってくるストーリーでしたが、今回は「呪い」です。それも、チェスの「キング」を針刺しにするという古風な手段です。日本の藁人形のようですね。

 これは、「シークレット・シティ・ロンドン」(マイケル・チェンバース/北星堂書店)の中で紹介されていたエピソードを参考にしています。

 それによると、エリザベス1世を暗殺しようとしたアンソニー・バビントンは、リンカーンズ・イン・フィールズにおいて女王を模した人形を針刺しにし、呪いをかけたとされています。その後、計画は露見し、極刑に処せられます。

 作中にもあったように、バビントンは四つ裂きの他、凄惨な殺され方をします。大逆罪(国王に対する反逆罪)は、元々惨たらしい処刑方法が定められていたそうです。ですが、そのあまりに凄惨な処刑を耳にしたエリザベス1世は、バビントン以外の罪人は「人道的な処刑」をするように命令を下したそうです。

 しかしこれは、エリザベスの計算のように思えてなりません。バビントン一人を惨たらしく殺せば充分な見せしめになります。そして、それ以外の罪人に「慈悲」を与えて苦しまずに絶命させる処刑にすれば、女王の評価も上がるわけです。

 宗教と政治が絡むとこんなに恐ろしいことが行われるのですね……。

 さて、話がずれてしまいましたが。

 バビントンの亡霊を絡ませたストーリーでしたが、今回はジェームズとヴィリアーズがひどいめに遭いました。なんだかんだで二人を心配するチャールズの活躍で呪いは解かれ、事件は解決……。ですが、チャールズの心にはあの「予言」が胸を離れないでしょう……。

 それと、今回はチャールズが誕生日を迎えました。おめでとう!

 ちょうど作中の年齢の頃の肖像画には、大粒の真珠の耳飾りが描かれています。この耳飾りは相当お気に入りだったようで、その後成人してからも、肖像画には何度となく描かれています。そして、最期を迎える時も外さなかったといいます。それがもしも、ヴィリアーズから贈られたものだったとしたら……?

 ちなみにこの時代では、男性は片耳にだけ耳飾りをつけるのが「粋」だとされていたようです。映画「三銃士」でも国王ルイ13世やバッキンガム公(ヴィリアーズ!)は片耳にだけ耳飾りをつけています。二人とも史実として男色の疑いがあるので、「片耳ピアスと言えばゲイ!?」と思ったのですが、この時代のお洒落だったのですね。とんだ早とちりでした。

 さて。

 この度も、史実を交えながらもかなり突飛な要素を大胆に取り込んでみました。いかがだったでしょうか。

 機会があれば、(ネタがあれば、とも言う)またこのシリーズの続編を書きたいと思っています。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

 あ、そうそう。

 リンカーンズ・イン・フィールズには、〈今も〉バビントンの幽霊が現れるそうですよ……!

2012.8.1



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